腎盂炎とは
通常、私たちの尿と尿路は無菌状態に保たれています。
通常ならば多少の微生物(細菌など)が進入しても新たな尿で洗い流されてしまうため、
それらが繁殖することはありません。
ところが大量の微生物が進入したり、洗い流す尿が不足していた場合や、免疫力が低下した場合などで
尿路に感染することもあります。
尿路が感染することで、尿道口~尿道→膀胱→尿管→腎盂というように、尿の流れとは逆に進行します。
また、腎盂炎は腎盂だけでなく、腎臓全体に感染が及ぶことから“腎盂腎炎”とも呼ばれます。
腎盂炎の原因
腎盂腎炎は細菌による感染症ですが、もともと健康な人の膀胱、尿管、腎盂には細菌は存在しません。
それがなんらかの原因で細菌が侵入して炎症を起こすのです。
細菌の侵入経路によって、大きく3つの感染タイプに分けることができます。
- 上行性感染
細菌が外部から尿道、膀胱、尿管を遡ることによる感染で、最も多いタイプです。 - リンパ行性感染
尿道から膀胱、尿管、腎盂の周囲にあるリンパ腺から感染します。 - 血行性感染
血液の流れを通じた感染です。
腎盂腎炎の原因となる細菌は、主に大腸菌、緑膿菌などグラム陰性桿菌と腸球菌です。
なかでも大腸菌による感染が多く、腎盂腎炎の約90%を引き起こしています。
女性に多い理由としては、女性は男性より尿道が短いことと、尿道口と肛門が接近しているために
上行性感染による細菌感染が起こりやすためです。
腎盂炎の症状
急性腎盂腎炎の症状は突然ガタガタと震える悪寒を伴って高熱がみられます。
また、冷や汗が出て、背中やわき腹に痛みを覚えることがあります。
腎盂腎炎と同時に膀胱炎も起きている場合は、排尿時の痛み、頻尿、残尿感などの症状が起きます。
慢性腎盂腎炎の症状は急性腎盂腎炎よりも軽く、微熱、倦怠感、わき腹部分の痛みなどがあります。
腎盂炎の治療
腎盂炎はそのタイプ(急性もしくは慢性)や症状、原因菌によって治療法が異なります。
おおまかに急性腎盂腎炎と慢性腎盂腎炎の治療を御紹介致します。
- 急性腎盂腎炎
- 原因となっている細菌を判別し、それに有効な抗生物質を使います。
さらに安静と保温と水分補給に心がけるようにします。
通常およそ1週間ぐらいで治りますが、完全に治すことが大切で、自己判断で抗生物質の服用をやめたりすると、慢性化する恐れがあります。
安静については、腎臓への血流量は身体を横にしているとき、つまり寝ている姿勢のときに
一番多くなります。
寝て血流量を増やすことで、腎臓の機能の回復を早めることができるのです。
保温がなぜ必要かというと、身体を冷やすと腎臓への血流量が少なくなるからです。
夏にも効きすぎた冷房で身体を冷やさないようにして下さい。
- 原因となっている細菌を判別し、それに有効な抗生物質を使います。
- 慢性腎盂腎炎
- 急性と同様に抗生物質を使いますが、治療は長期に及ぶことが少なくありません。
慢性腎盂腎炎を引き起こす尿管結石などがある場合は、除去する治療や手術を行います。
前立腺肥大などについても同様です。
- 急性と同様に抗生物質を使いますが、治療は長期に及ぶことが少なくありません。
腎盂炎の予防
病原菌が尿道に入らないようにすることです。
- 排便後、肛門を前から後ろに向かって拭く。
- 生理用品をこまめに取り替える。
- 水分を多めに摂るようにする(尿量を増やして、細菌を排出する)。
- 性行為の後は、なるべく早く排尿するようにする。また、シャワーな・どで、性器及び周辺部を洗う。
- 下半身を冷やさないようにする。
- 疲れやストレスをためない。
もしかして膀胱炎かも知れないと思ったら、すぐに「かかりつけ医」に相談しましょう。
膀胱炎の治療は難しいものではなく、抗生物質や抗菌薬で原因となる細菌を除去すれば
炎症は治まります。